姫君が難点のないお人柄だったのを、源氏の君は喜ばれて、紫に上にもお話しになります。 「ああいう田舎者の中で長年暮らしてきたので、どんなに見すぼらしいだろうと見くびっていたところ、かえってこちらが気恥ずかしくなるようないい娘でしたよ。こんな娘がいることを、なんとかして世間に知らせて、兵部卿
の宮みや などが、この六条の院を気に入って来られる気分をいっそうかきたててあげたいものだ。色好みの連中が、ひどく真面目くさった顔つきでこの邸にやって来るのも、こういう気持をそそられるような若い娘がここにいないからですよ。この姫君を存分に大切にして世話してみたいものだ。そうして、とりすましてばかりもいられなくなる人々の様子を見くらべてやろう」 と言われるので、紫の上は、 「変な親御ですこと。何よりも先に男の方の気持をそそるようなことをお考えになるなんて、悪いお方」 とおっしゃいます。源氏の君は、 「ほんとうはあの当時、わたしが今のような気持だったら、なたをこそ、そんなふうに扱って、男を迷わすようにしてみるのだった。全くあの時は深い心もなく、なたを平凡な妻にしてしまったものですよ」 と、お笑いになります。紫の上が恥ずかしがって顔を赤らめていらっしゃる風情は、たいそう若々しく美しく見えます。源氏の君が硯すずり
を引き寄せられて、手すさびに、 |