と言って慰めます。 この雪が少し解けた頃に、源氏の君は大堰をお訪ねになりました。明石の君はいつもなら待ちかねていらっしゃるのに、今日は、姫君をお迎えにいらっしゃったのだろうと感じ、胸もつぶれる思いがして、これも誰のせいでもない自分の招いたことなのだと悔やまれます。 「もともとお断りするのも従うのも自分の心次第なのだから、いやだと申し上げたら、それでも無理にとはおっしゃらないだろうに。つまらないことになってしまって」 と思いますけれど、今更お断りするのも軽率なようなので、強いて思い直しています。 源氏の君は、姫君がいかにも可愛らしい姿で、目の前に坐っていらっしゃるのを御覧になりますと、 「こんないとしい子を儲
けたこに人との宿縁は、いい加減に思ってはならないのだ」 とお考えになります。 この春からのばしはじめた姫君のお髪ぐし
が、尼のそいだ髪のように、肩のあたりでゆらゆらと揺れているのが可愛らしく、顔つきや目ものtのはんなりと匂うような美しさなど、今さら言うまでもありません。 この可愛い子を人手に渡して、遠くから案じつづけるだろう明石の君の、親心の闇をお察しになりますと、源氏の君はたまらなく不憫ふびん
になられ、安心するようにと繰り返し、夜を徹してお慰めになります。 「いいえ、何で悲しみましょう。せめて、わたくしのようなつまらない者の子としてではなくお扱い下さいますなら」 と申し上げながらも、こらえきれずにしのび泣く気配が、痛々しいのです。 |