末
摘 花 (十二) | 二条の院にお帰りになって、お寝
みになられてからも、やはり思うことなどめったに叶かな
わない世の中なのだと、お思いつづけになります。あの姫君の御身分の重さを思うと、好きになれないからといって、今更疎略にも扱えないしなどと、心苦しくお考えになるのでした。 あれこれ考えて悩んでいらっしゃるところへ、頭の中将がお見えになりました。 「ずいぶん朝寝坊なさいますね。それにはわけがあろそうに思われますn」 と言いますので、源氏の君は起き上がられて、 「ひとり寝の気楽さ、つい気がゆるんだのか朝寝坊してしまいました。今、宮中からですか」 おおっしゃいます。 「ええ、宮中から下がってその足で来たばかりです。朱雀院すざくいん
の行幸ぎょうこう について、楽人がくにん
や舞人まいびと を今日、決められるということを、昨夜承りましたので、左大臣にもそのことをお伝えしようと思って退出してきたのです。すぐまた宮中へ引きかえします」 と、忙しそうにしていますので、 「では、一緒に行きましょう」 と、お粥かゆ
や強飯こわいい を召し上がって、頭の中将にもおすすめになりました。御車は二輌つづいて引き出したのですが、一つの車に御一緒に乗られて行きました。 「やはり、とてもお眠そうですね」 と、頭の中将が朝帰りの嫌味を言いながら、 「ほんとに隠し事がたくさんおありだから」 と、恨みがましく言います。 宮中では、いろいろな事が決められる日だったので、源氏の君も終日、宮中にお詰めになっていらっしゃいました。 |
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