2015/11/25 (水)
帚 木 (二十三)
「恋しさをどうなぐさめたらいいのでしょう。<夢だに見えず寝(ぬ) る夜なければ> の歌の通りです」などと書かれた、眩(まばゆ) いほどの御立派なお筆の跡も、涙に曇って女には読みきれないのでした。受領の妻になった運命の上に、今また源氏の君に愛されて、思いがけないあやしい因縁が新たにまた一つ加わった自分の悲しい運命を思い続けて、女は打ち臥してしまうのでした。