〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part V-V』 〜 〜
── いつまでも、いつまでも お元気で ──
特攻隊員たちが遺した最後の言葉

2014/09/14 (日) 

竹田 源三 20歳 少尉

おばあさん
永い間御世話に相成りました。
一方ならぬ御厚情厚く御礼申上げます。
十三時頃訪問致しましたが御わかりですか?
屋根に上がって赤い布や白い布を振って居るのが “はっきり” 見えました、二階から振って居るのがたしかおばあさんでしたでしょう。
いよいよ出発です。 “キット” 敵艦を轟沈せしめて見せます。
御隊長より離れて悲哀に暮れて居る自分を良く励まし下され本当に力強く有難う御座いました。追っても追いつかざる隊長殿を慕いて後馳おくれば せながら唯一筋に大君の御楯として悠久の大義に生きるのみです。
どうか元気で自分等の分まで長生きして下さい。
先ずは色々と有難う御座いました。
                      竹田 源三
  緒方のおばあさんへ
        皆々 様   五時頃上を通ります。

宮川 三郎 20歳 少尉
      轟 沈
            代三降魔隊
               陸軍々曹
 宮川 三郎
枝 幹二 22歳 大尉
あんまり緑が美しい
今日これから 死にに行く事すら 忘れてしまいそうだ。
真っ青な空
ぽかんと浮かぶ白い雲
六月の知覧は もうセミの声がして 夏を思わせる。
作戦命令を待っている間に
小鳥の声がたのしそう
「俺もこんどは 小鳥になるよ」
日のあたる草の上に ねころんで
杉本がこんなことを云っている
笑わせるな
本日一三、三五分
いよいよ知ランを離陸する
なつかしの 祖国よ さらば
使いなれた 万年筆を “かたみ” に
送ります。
『いつまでも、いつまでも お元気で』 編:知覧特攻平和会館 ヨリ
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