〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part V-V』 〜 〜
── いつまでも、いつまでも お元気で ──
特攻隊員たちが遺した最後の言葉

2014/09/13 (土) 

渡辺 綱三 18歳 少尉

   一 筆
お父さん長々の御無音お許しの程を。さぞ御心配の事と遠察、不幸お詫び致します。
父上にも早や覚悟の上とは思いますが、綱三もこのたび 特攻の大命を拝しました。お喜び下さい。今は○○基地にて出撃を今日か明日かと草原に待って居ります。
此の便りが届きの頃は早や永遠の眠りに付いて居ります。しかし父上けっしてさび しく思わんで下さい。綱三は御両親様より先に きますが、大和男子としての本懐、大義の下喜んで体当りを致します。必ず轟沈の報をお知らせ致します。
ではもう何も思い残すことありません。只今までの不幸くれぐれもお許しの程を。
   大命の まにまに逝かむ  今日の日を
       吾が父母や 何とたゝへん 
  お父さんお母さんさよーなら
  五月二十日
              綱三 拝     

藤井 一 29歳 少佐
冷え十二月の風の吹きすさ ぶ日
荒川の河原の露と消し命。母と共に殉国の血に燃ゆる父の意思に添って一足ひとあし 先に父と殉じた哀れにも悲しい、しかも笑っているごと く喜んで母と共に消え去った幼い命がいとおしい。
父も近く御前達の後を追って行けることだろう。
いや がらずに今度は父のひざなじん でだっこして寝んねしょうね。
それまで泣かずに待っていて下さい。
千恵子ちゃんが泣いたらよく御守しなさい。
ではしばら く左様なら。
父ちゃんは戦地で立派な手柄をたてて御土産にして参ります。
では、
一子かずこ ちゃんも、千恵子ちゃんもそれまで待ってて頂戴。
『いつまでも、いつまでも お元気で』 編:知覧特攻平和会館 ヨリ
Next