一 筆 お父さん長々の御無音お許しの程を。さぞ御心配の事と遠察、不幸お詫び致します。 父上にも早や覚悟の上とは思いますが、綱三もこの度
特攻の大命を拝しました。お喜び下さい。今は○○基地にて出撃を今日か明日かと草原に待って居ります。 此の便りが届きの頃は早や永遠の眠りに付いて居ります。しかし父上けっして淋さび
しく思わんで下さい。綱三は御両親様より先に逝ゆ
きますが、大和男子としての本懐、大義の下喜んで体当りを致します。必ず轟沈の報をお知らせ致します。 ではもう何も思い残すことありません。只今までの不幸くれぐれもお許しの程を。 大命の まにまに逝かむ 今日の日を 吾が父母や 何とたゝへん お父さんお母さんさよーなら 五月二十日 綱三 拝 |