〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part V-V』 〜 〜
── いつまでも、いつまでも お元気で ──
特攻隊員たちが遺した最後の言葉

2014/09/09 (火) 

若杉 潤二朗 24歳 大尉
母上様
 先日は突然帰って驚きの事だったろうと想います。未だお会い出来るものと考えて居りましたが二日後には九州の地へ一足飛びに来ました。
 早速お便り差し上げようと思いながらさて改まって書く事も無く過ごして来ました。

 何の親孝行も出来ず心苦しく思います。二十六年幸せだったと心から思います。有難うご座いました。一足ひとあし 先、父上と大好きだった園ちゃんのところへ参ります。
 入営と同時に皇国のため捨てる命と定めておりましたがやっと年来の希望がかない特攻の大命を拝し喜んで死んで行きます。お母さんは喜んでくれると信じます。大命を拝して以来色々と親切にしてもらいあたりませの事をする吾々にとっては心苦しいくらいです。

 自分も小隊長として可愛い部下三名、十九と二十の若武者を引きつれて突撃して きます。花はつぼみと いますが本当に清らかなものです。篠原、田中、由本の三伍長です。
 この手紙がつく頃は見事戦果をあげてみせます。自分よりこの三人の可愛い部下のため祈ってやってください。
 何か書かなければと重いなながら筆が進みません。
 金銭と女性関係はありません。
 貯金、妹のため何かに使って下さい。わず か三時間でも皆さんに会えたのも父上の引き合わせと思います。
 くれぐれもお身ご大切に長命を祈って居ります。
 お元気でお過ごし下さる様。
 では征きます。必ずやりますからご心配なく。

 皇国の 弥栄いやさか 祈り 玉と散る
      心のうちぞ たのしかりける
                潤 二 朗
『いつまでも、いつまでも お元気で』 編:知覧特攻平和会館 ヨリ
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