だが、今にして、気がついたのは、そういう限度でやっている限り、築港の完成は至難だということである。国力の大をもって、一挙に、急速に、築堤の根柢
をすえなければ、また来年の台風期には、同じ水泡すいほう
の空しさを見るに過ぎないと覚ったのである。 「── この秋、もいちど、法皇の御幸を仰ごう。そして、さらに御聴許をせまり、次の年こそ、きっと宿志を成し遂げてみせる。空言ではない。清盛には、成案もあり、法王との御内約もあってのことぞ」 清盛は、二奉行を、力づけて、そう言った。そして、かねがね自分から提出してある
“太政官符” の写し文ぶみ を、二人に示した。 |