結婚したすぐ翌年。──保延四年には、時子はもう妊娠
っていた。見てもわかる体をしていた。 妻に異状を訴えられた時、清盛は、率直によろこべもしない、まごついたような顔色を見せた。なぜか、たった一ぺん六条裏の遊女あそび
と寝たことなどが、いやな回顧の陰影になって、突然、二十一歳で父を宣告された男の ── 自責を独ひと
り脅かされた。 「・・・・おうれしくは、ないんですの?」 「それは、うれしいさ。けれど、わが家は武門だから、男の子ならよいがなあ」 言わなければ、妻へ、悪いような気持で、清盛は、あわてて言った。 |