〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part T-Z』 〜 〜
エ ピ ソ ー ド で 綴 る そ の 人 間 力

2012/10/28 (日) 飛 騨 高 山 時 代 明治十〜十六年 (1877〜83)

おおむね十歳から十七歳の多感な時期を、廣瀬は岐阜県の高山で過ごした。高山は廣瀬にとって第二の故郷である。
生まれ故郷の竹田にある岡城は、別名臥牛がぎゅう 城と呼ばれていた。廣瀬にとっての岡城は、町のシンボルのみならず、サムライの子としての心の拠り所だった。
転居先の高山には、偶然にも臥牛山という小高い山があったから、廣瀬はこの山を岡城と思い定め、自己修養の場とした。
地元の煥章かんしょう 学校に学んだ廣瀬は、成績優秀であったため特級し、十五歳のときそもまま代用教員として迎えられた。廣瀬は子供好きであったから、廣瀬の周りにはいつも子供たちがまとわりついていたと言う。
海軍に入ってからの廣瀬は、なぜか女嫌いで有名だが、高山時代には人並みに初恋も経験しているようだ。料亭 「洲崎すさき 」 筋のしとやかなお嬢さんに、密かに恋心を抱いていたというが、確かな事はわからない。

著:櫻田 啓
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