第三十五代アメリカ大統領
J・F・ケネディは、就任演説でこう述べた。 |
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問わないで下さい。国があなたのために何をしてくれるかを。問うてみて下さい。あなたが国の ために何ができるかを ── ── 国のために何ができるか
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ケネディよりも七十年前、多くの若者たちがそう考えていた明治という時代、廣瀬武夫もその若者の一人だった。 廣瀬は、国の為に尽くしたい一心で海軍の軍人となった。 この国には、古来、一源三流
という武士の魂を伝えた教えがある。 |
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国のためには血を流せ ・ 家族のためには汗を流せ ・ 友のためには涙を流せ |
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その源みなもと
は一つ、誠の心にあるという。 廣瀬武夫の短い生涯を端的に表わせば、まさに一源三流の生き方を貫いた人だった。 勤皇のサムラだった父と厳格な祖母に育てられた広瀬には、サムライの指標である誠の心が根付いていた。 海軍軍人として、この国の為に命をかけて尽くしたからこそ、上司や友人たちから
「軍神」 と呼ばれ、国民の敬慕を集めた。 家族には精いっぱいの愛情を注ぎ、周囲の友人や知人には、表裏なく真っ正直に接した。 そんな人柄であったから、日本人はもとより外国の人々からも、美しく爽さわ
やかな好人物として愛された。 廣瀬武夫は筆まめな人だった。生涯に二千通以上の手紙をいろいろな人たちに書き送っている。 その内容は廣瀬流ともいわれており、相手にとって文体を変えている。 子供宛には童謡のような可愛いく、家族には真情のこもった温かなもの、上司や友人には詩と洒脱を交えた熱意のこもったもの。虚飾と無駄のない文体そのものに、廣瀬の人間性を垣間見ることが出来る。 手紙を通して、あるいは廣瀬の残した足跡から、廣瀬にまつわるエピソードは多い。そのエピソードを綴って、廣瀬の人間力
(魅力) に触れてみたいと思う。 |