士農工商という身分制の頂点に立った武士は、 「政治と行政を行うべく天から命ぜられた役人」 になった。彼らは生産者ではない。彼らの生計は農民の納める年貢
(主として米) によって賄
われる。今で言えば、 「納税者によって養われる存在」 である。昔の事だから、現在のような民主主義に基づく 「公僕意識」 はまったくない。 しかし良心的な武士たちは自分たちの心構えの基本になっている儒学から、多くのことを学んだ。とくに、 「政治を行う者はどうあらねばならぬか」 という命題は常に彼らの心におく関心事であった。江戸時代は、武士のブレーンが僧から学者に変わった時代である。戦国時代までは仏教に拠よ
るお坊さんが主たるブレーンだったが、家康の林羅山登用によってこれがカラリと変わった。江戸時代の武士のブレーンはほとんどが学者になる。これらの学者の指導によって、
「年貢によって養われる武士のあるべき姿とその心構え」 が説かれた。その帰着するところは、 |