廣瀬武夫の
「武」 の字はいろいろな意味がある。それはもちろんここに書いた “武士の武” の意味を示すことは明らかだ。しかしそれ以上に、 「廣瀬家の先祖は、南朝時代に宮方
(後醍醐ごだいご
天皇) に味方して活躍した、菊池氏だ」 と言われる。菊池氏の一族は 「武」 がつく人物が多い。もともとは藤原氏の流れだといわれ、十二代目の当主菊池武時たけとき
(?〜1333) は、“主上ご謀反むほん
” と言われた後醍醐天皇の元弘の乱 (1331) に加担し、大いに幕府方と戦った。この反幕府精神は、代々引き継がれた。その反骨精神を示すのが、それぞれの名前に加えられた
「武」 の一字であったと言ってもいいだろう。 廣瀬家にもその流れが伝わった。武夫の父重武しげたけ
の武も、その意味を含めていることは間違いない。子供の時から武夫は祖母にこのことを懇々と教えられたという。すなわち、 |