〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part T-U』 〜 〜
あ らす じ

2012/05/08 (火) 主 上 、 六 波 羅 へ 行 幸 の 事

天皇も六波羅へ行幸になった。人目をしのび女房姿になって御車に召されたが、義朝の家来たちが怪しんで、弓の先で御車の簾をかき上げ、松明たいまつ を振り入れて覗き見たりした。ところが二条天皇は十七歳、御鬘おんかつら を召し女房の着物を重ね着され、中宮もお側においでになる。美しい女房たちばかりなので、東夷あずまえびす には見分けがつかず、無事にお通ししてしまった。やがて御車は飛ぶように走って、重盛以下の守護に導かれながら六波羅へお入りになった。
平家の一族は大喜びで、 「六波羅が皇居になったぞ。お上に志のある者は皆々参れ」 と披露したので、忠通ただみち きょう を始とする関白・太政大臣以下、公卿殿上人も武士たちも皆、六波羅へと馳せ参じた。

『保元物語・平治物語』 発行所:角川書店  ヨ リ
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