〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part T-U』 〜 〜
あ らす じ

2012/05/08 (火) 清 盛 、 六 波 羅 に 上 著 の 事

清盛は一千余騎の軍勢を率いて、二十六日に夜半、事なく六波羅に着いた。二十六日の夜になって、右少弁うしょうべん 成頼なりより一品いつぽんの 御書所ごしょどころ に参り、 「陛下の行幸は六波羅へと承ります。上皇さまは何処へ御幸なされましょうか」 とお尋ねすると、 「仁和寺へ」 と仰せになった。さて御所から脱出されるとき、北面の武士のたいらの 泰頼やすより という声色こわいろ の名人を院の御寝所に留め置かれた。そこで泰頼は、しきりに院の声色を使っていたが、上皇がはるかの落ちのびささられたところを見はからって、御寝所を三度拝んで退出した。そのときにはもう、院は仁和寺にお着きになっていた。

『保元物語・平治物語』 発行所:角川書店  ヨ リ
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