東三条
には、院方 の兵
ども、夜は集まり集 ひ、謀叛
をたくらみ、昼は木の梢
、山の上に登りて、内裏
高松殿 を伺
ひ見るよし聞えけるあひだ、明くる三日、下野守
義朝 に仰
せて東三条の留守 小監物
光員 以下
、兵三人を溺 め捕
る。 「昨日法皇 崩御
なりしに、いつしか今日かかる事の出
で来 ぬるは、いかなる事にか」
と、万人 怪
しみあへり。およそ京中に謀叛の聞
えありて、軍兵 東西南北より入り集まり、兵具
をば馬に負 せ車に積み、包み隠しても群
がり集 ふ。そのほか、怪しき事のみ多かりけり。 また、新院も内々仰せありけるは、
「そもそも、祚 を嗣
ぎ位を得 る事、必ずしも嫡庶
によるべからずといへども、且
は器量 の堪否
に従ひ、且は外戚
の高卑による事ぞかし、しかるを、当腹
寵愛 をもって、遥
かの末弟近衛院
に位を奪はれたりしかば、人に対して面目
を失ひ、時に当りて恥辱
を抱 く。しかりといへども、事の拠
なきによって、先帝
若年にして崩 ず。これ、既
に天の承 けざるところ明
けし。よりて、この時に、重仁親王
嫡 々
正統 なり。もっともその仁
に当りたるところ、あまつさへ、また、員
の外 の四宮
に超越せらる。遺恨 の至り、謝するところを知らず。いかがせまし」
とぞ思 し召
されける。 |