〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part T-T』 〜 〜

2012/03/14 (水) 武 家 の 中 央 進 出

権力闘争の舞台は宮中外に広がってゆくとともに、武力闘争の様相も帯、武力行使を行う家臣として武士が必要欠くべからざるものとなってゆく。一方延暦寺などの寺社権門と朝廷側との間で軋轢・対立があり、寺社権門が自らの利益を確保維持するために実質的な武力衝突を時々起こすようになる。延暦寺などの寺社権門が、武装した僧兵や神人と呼ばれる兵力を大勢抱え武力衝突の戦力としたのである。
このような状況の中で、実質的な政治的実権者であり 「治天の君」 と呼ばれた上皇は、寺社権門など外からの攻撃に対し、防御・反撃するための武力が必要となり、武士を身近に置き、重用するようになった。このことが院政における、北面の武士を初めとする中央政治における武士の階層的上昇をうみ、武士が院の近臣となったと考えられる。
また武士のみ身分に面からみてみると、天皇に近侍する者は、役職や官位が厳しく制限され自然少数に限定されてしまうのだが、上皇の場合にはその制限から解き放たれており、様々な人々を身近に置くことが出来た。そこで身分が低くとも才能や実力のある者たちが集められ中・下級貴族が登用され、院の近臣と呼ばれる才能のある上皇の政治ブレーンが形成された。武士も同様である。上皇は、身分の低い武士身分の者たちを自由に大勢身近に置くことが可能で、大きな武力を備えることが出来るようになったのである。武士は院の近臣として上皇の身近に侍り、中央進出を果たすとともに、政権内での発言権も得るのである。

「平清盛」 発行: NHK・NHKプロモーション 著:石橋健太郎 広島県立美術館 ヨリ
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