垓下歌
漢兵已略地
四方楚歌声
大王意気尽
賎妾何聊生
虞美人 |
|
垓下歌
漢兵 已に地を略す
四方は楚歌の声
大王の意気 尽く
賎妾 何ぞ生を聊わんや
虞美人 |
|
項王の軍、垓下に壁す。
兵少なく食尽く。
漢軍および諸侯の兵、此を囲むこと数重なり。
夜、漢軍の四面楚歌するを聞き、
項王乃ち大いに驚きて曰く。
漢皆巳に楚を得たるか、
是何ぞ楚人の多きやと。
項王即ち夜起ちて帳中に飲す。
美人あり、名は虞。
常に幸せられて従う。
駿馬あり。
名は騅。
常にこれに騎る。
是に於て項王悲歌慷慨し、
自ら詩を為りて曰く。
力は山を抜き、気は世を蓋う。
時に利有らず、騅逝かず。
騅の逝かざるを奈何すべき。
虞や虞や若を奈何せん。
歌うこと数ケツ。美人これに和す。
項王涙数行下る。
左右皆泣き、能く仰ぎ視るもの莫し。 |
|
|