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2016/08/12 (金) | 藤
裏うら 葉ば
| 内大臣邸の藤の花見の宴で、内大臣が口ずさんだ古歌の | 春日さす
藤の裏葉の うらとけて 君し思はば 我も頼まむ |
| による題名である。 内大臣は夕霧中務の宮が婿に望んでいるという噂を聞き、やきもきする。昔、自分が若い二人の仲を生木を裂くようにしたことを後悔し、何とか夕霧と雲居の雁との仲を修復しようと考えている。 大宮の三回忌に自分から折れて、夕霧の袖を引き、どうぢてそう情なくするのか、自分の昔の罪は許してくれと言う。内大臣としては最大限の譲歩であった。 四月の初め、内大臣家の藤の花の宴に夕霧は招かれた。源氏は自分の衣服の立派なのを着せて行かせる。 夕霧は念入りのおしゃれをして、夕暮、相手が気を揉んでいる頃出かけて行く。夕霧の立派さと水際立った美貌は郡を抜いていた。 その夜、夕霧は許され、柏木に案内されて雲居の雁の部屋に行く。二人の恋は仲をさかれてからもう七年越しで、ようやく長い試練の果てに結ばれたのだった。新婚の二人は幸福で申し分なかった。 四月二十日過ぎ、いよいよ明石の君の入内となった。 明石の姫君入内の前、紫の上は上賀茂神社の祭神の御降臨を迎えるお祭に行き、その後、葵祭の見物をする。 紫の上は、入内を機に、明石の君を姫君の後見役として推薦した。 明石の君は大堰で雪の日の別れをして以来、同じ六条の院に住みながら、わが子をちらとも見ることを許されなかった。漸く、実の母と娘は、宮中で共に暮す幸運を得た。 紫の上と明石の君は、はじめて対面する。二人とも相手の美しさと教養の深さに感動し、源氏が愛するのも無理はないと互いに認め合う。二人の女はこれまでの怨みを流し合った。 源氏はすべての心配事が解決した今、出家の志を持つ。 来年の四十の賀の準備中、源氏は准太上天皇の地位に上る。臣下としては考えられない最高の名誉である。内大臣は太政大臣に、夕霧は中納言に上る。 夕霧と雲居の雁は、大宮の三条の邸を改修し、二人して住む。 十月二十日あまり、六条の院に、行幸があった。朱雀帝も同行し、またとない晴々しい盛儀となる。 今こそ、源氏の半生はここに大団円を迎える。
「桐壺」 にはじまり、 「藤裏葉」 で、生涯の一区切りとなり、この帖を第一部の終わりとする。 源氏三十九歳、紫の上三十一歳、秋好む中宮三十歳、明石の君三十歳、夕霧十八歳、雲居の雁二十歳、明石の姫君十一歳である。 |
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| 源氏物語
(巻五) 著:瀬戸内 寂聴 ヨリ |
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