�ｺと絶対的権力とは、アングロ・サクソン人の心には調和し得ない言葉のように響くかもしれない。
ロシアの政治家ポベノボスツェフは、イギリス社会の基礎と他のヨーロッパの社会の基礎との違いを明らかにしてくれている。 ── 大陸諸国の社会は共通の利害を土台に組織されているのに対し、イギリス社会は強く発達した独立した個人によって特徴づけられている、と。
このロシア人政治家は、ヨーロッパ大陸諸国、とりわけスラヴ系諸民族の間では、個人の人格は何らかの社会的団体、つまるところ国家に依存すると述べているが、これは日本においては二重の意味で真実である。
このために、」私たち日本人には、君主の権力の自由な行使がヨーロッパのようには圧政と感じられないだけでなく、その権力の行使は、通常、人民の感情に対する父親らしい配慮によって緩和されていた。
ドイツの政治家ビスマルクは言う ── 「絶対主義は、第一に統治者に、公平、正直、義務への献身、活力、および心の謙虚さを要求する」 と。
この問題についても、もう一つ引用を許されるとしたら。私はドイツ皇帝がコブレンツで行った演説を引きたい。その中で彼は、 「王位は神の恵みによるものであり、ただ創造主に対してだけ重い義務を負い、大きな責任を負う。なにびとにも、大臣も、議会も、君主からこれを免除することは出来ない」 と言っている。