このように、その源泉が何であるにせよ、武士道がそこから取り込んで自己のものとした本質的な原理は、わずかで単純なものだった。そうであるにせよ、わが国民の歴史上、もっとも不安定な時代のもっとも危険な日々においてさえ、確かな教訓を与えるには十分であった。 私たちの祖先である武士の健全で素朴な性質は、古い思想の本道やわき道から拾い集められた平凡で断片的な教訓の穂の中から、彼らの精神の十分な糧を引き出し、時代の要求に刺激され、新しい独特な男らしさを形づくっていったのである。 フランスの鋭い学者ド・ラ・マズリエール氏は、十六世紀日本の印象を要約して言っている。
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