〜 〜 『 寅 の 読 書 室  Part V-V』 〜 〜
── いつまでも、いつまでも お元気で ──
特攻隊員たちが遺した最後の言葉

2014/09/16 (火) 

和田 照次 21歳 大尉

お父さん
お母さん
お元気ですか。
今日私は特別攻撃隊員として出撃致します。
こヽ知覧は昨年八月より十一月まで居った所だけに一木一草みな懐かしく思われます。隊員を命ぜられてから今日の至るまで無事任務を完遂出来る事のみを念じて居りました。
出撃の時は来ました。今はひたすら神明の加護を念じて居ります。
酔生夢死すいせいむし の人生、無為の人生、といった人生の多い内に敵艦必沈と言う大きな究極の目的をもって閉ずる私の人生は神々に祝福されたものと思います。
小さい時から肉親兄妹の溢れるばかりの愛情の内にはぐく まれた私は本当に幸福でありました。私の希望あるい我儘わがまま をみなきヽ届けて下さった私の人生は誰よりも幸福であり充実されたものでした。それに引換え、私が子として御両親に何ら報ゆるところ なくして くを非常に遺憾いかん と致します。
昨年の七月以降にお目にかかる機会はありませんでした。しかしあの時夏の清々すがすが しい夕べ、明るいともしび の下で皆様と楽しくお話したときの事はいつも忘れませんでした。
私が居なくなってもみんな元気でお父さんは外でお働きになる。お母さんは内の仕事をおやりになる。けさ江やふさ江、ともえはすこやかに大きくなって幸福な家庭を持つ様になる。そして皆が明るく楽しくたす けあって美しい生活を営む。私はそれをねが いそれを祈って居ります。
出撃前で時間がありません。
私の心は如何いか にしてもこの大業を完遂する事とみな様のお元気であるを願う事です。
   では御機嫌よう
   さようなら
               照 次
  皆様へ
  六月六日

『いつまでも、いつまでも お元気で』 編:知覧特攻平和会館 ヨリ