我れ南十字星の下大海原を越え空の決戦場の征
かんとす。 母上様 憲二生まれてより今日まで一度として母上に満足なことをなさず御苦労を御掛け致し申訳なく存じます。 母上様憲二は大命により征かんとして居ります。門の外まで憲二の門出を喜び御見送り下さる母上の顔が見えます。 憲二はどうして死ぬことなど恐れましょう。 桜の花の散る校庭に学び育ちました憲二です。
兄上姉上様には父亡き後
常に範を示し御指導下され心より御礼致します。 千鶴子 俺の分まで母上様に孝行してくれ。兄が死したと聞かば立派にお国のために大空に華と散りましたと父上様に御報告してくれ。 俺の前には若鷲わし
の香りする香こう をたいてくれ。 十一月八日 憲二
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