九: 英雄を称える詩に、我々は心を動かされます。
しかし、同時に反戦の詩にも心を打たれます。
戦争は
手と足じゃたりなくて
心まで持っていくんやな
大好きと思ったり心は大事な
ものやのにみんな持って
いくんやな。

オリンピックで
みんな握手しとったわ
本当は世界中みんな
仲よくしたいんや

わからんことがたくさんある
戦争の話
読むだけで
はきそうになるのに
どういして今でも戦争は
あるのやろ。

悲しくつらい
気持ちです。
人が人を殺して
それが正しいことなんて
いったい誰が
思うんやろ
   十:偶 成
強富由来兵を弄し易し
黨人事を誤る古今の情
千秋の 社禝 誰か 鼎を扶けん
列国の英雄陰に衡を競う
変に應ずるの才髦頻に世に媚び
時に感ずるの詞客を枉げて生を偸む
江山灑がず新亭の涙
寧ろ滄浪に向かって濁清を試みん
              太刀掛呂山

十一:雪 崩 の と き   石垣 りん
人は
その時が来たのだ、という

雪崩のおこるのは
雪崩の季節がきたため、と。

武装を捨てた頃の
あの永世の誓いや心の平静
世界の国々の権力や争いをそとにした
つつましい民族の冬ごもりは
色々な不自由があっても
また良いものであった

平和
永遠の平和
平和一色の銀世界
そうだ、平和という言葉が
この狭くなった日本の国土に
粉雪のように舞い
どっさり降り積もっていた。

私は破れた靴下を繕い
編物などしながら時々手を休め
外を眺めたものだ
そして ほっ、とする
ここはもう爆弾の炸裂も火の色もない
世界に覇を競う国に住むより
このほうが私の生き方に合っている
と考えたりした

それも過ぎてみれば束の間で
まだととのえた焚木もきれぬまに
人はざわめきだし
その時が来た、という
季節にはさからえないのだ、と

雪はとうに降りやんでしまった

十二: 少し私の話を聞いて下さい。
私のおじいちゃんは兵隊さんでした。
私は祖父から戦争の話を聴くのがとても好きでした。
でもある日、祖父が言いました。
「お前、戦争の話、よう聴きたがってやけど、戦争の話嫌やわ。
戦争の話もうやめよう。」
祖父はそう言いました。
  十三:春  望
国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火三月に連なり
家書萬金に抵る
白頭掻けば更に短く
渾べて簪に勝えざらんと欲す
                 杜 甫
  十四:異国の丘
誰が唄うか遥かに聞こゆ異国の丘
哀調 綿々 望郷の情
北風に身を削る同胞の歌
鳥拉山邊日歿するの天
耐え忍んで斃るる勿異国の丘に
故郷肉親君を待つこと久し
友を励まし又も唄う異国の丘
歌聲天に通じて鬼神をも泣かしむ
             源 八岳