一: 世の中はすべて、光と闇、表と裏、プラスとマイナス
世界のどこかで 「平和」 を叫べば
世界のどこかでそれを打ち消す力が静かに進行する。

二: そういう星が・・・・ 新川 和江
壁から鋲をはづすやうに
空の一角から その星をはづす
すると満点に嵌めこまれていた星たちが
一挙に剥げ落ち
巨きな手でじゃらじゃら掻きあつめられて
宇宙のいっさいがゲームセットとなる・・・・・
すいう星が あるのではないか
言葉にもさういうひとことがあって
用いると
かがやいていたこの世のすべての物語が
一斉に緑青をふき 虚となってしまふ
あるいは 斃れていた馬の
全身が不意にびくびく痙攣し
やにはに起ちあがって千里を疾走する・・・・・

そのひとことを探すのが
詩人のしごとなのだろうか
それとも隠すのが
詩人の役割なのだろうか
  三・無 題
     
  林 子平
海外万国布いて星の如く

切りに他の刑政を奪わんと覬覦す

廟堂 曽て防辺の策無し

為に海防を説いて生霊を済わんとす

 


   五:金 州 城
山川草木転た荒涼
十里風腥し新戦場
征馬前まず人語らず
金州城外斜陽に立つ
         乃木 希典
四: 好むと好まざるに関わらず、
戦いを選ばねばならない事がある。
時にアジアの平和のため。
時に民族の誇りのため。
そして、たとえば
「ロシアは日本を粉砕すべき時機が来たと考えている」
とわかった時。

   七: 爾 靈 山
爾霊山は険なれども豈攀じ難からんや
男子功名克艱を期す
鉄血山を覆うって山形改まる
万人斉しく仰ぐ爾霊山
              乃木 希典

六: きみ死にたまふことなかれ 与謝野 晶子
君 死にたまふことなかれ、

すめらみことは、戦ひに

おほみづからは出でまさね、

かたみに人の血を流し、

獣の道に死ねよとは、

死ぬるを人のほまれとは

大みこころの深ければ

もとよりいかで思されむ。

ああをとうとよ、戦ひに

君 死にたまふことなかれ、

すぎにし秋を父ぎみに

おくれたまへる母ぎみは、

なげきの中に、いたましく

わが子を召され、家を守り、

安しと聞ける大御代も

母もしら髪はまさりぬる。

暖簾のかげに伏して泣く

あえかにわかき新妻を、

君わするるや、思へるや、

十月も添はでわかれたる

少女ごころを思ひみよ、

この世ひとりの君ならで

ああまた誰をたのむべき、

君 死にたまふことなかれ
   八: 凱 旋
大師百萬 強虜を征す
野戦功城 屍山を作す
愧ず我何の顔あって父老に看えん
凱歌今日幾人か還る
               乃木 希典