〜 〜 『 寅 の 読 書 室 』 〜 〜
 
2007/12/22 (土) TO KI KO
あふれる水が
流れていくように
とどめてもとどめても
涙があふれ出る
あなたの胸にほほをうずめ
ただそれだけで

あなたの胸に
吹きあれる風が
はてしない荒野のように
私を呼んでいる
抱きしめても抱きしめても
風はまだ吹きやまぬ

荒れ果てた荒野の中に
ただ一つ咲いた花のように

風にふるえ風にゆれて
私は待っている
抱きしめても抱きしめても
風はまだ吹きやまぬ

あなたの匂いが私を包み
あなたの髪もあなたの肩も
私を待っている
なのになぜかさびさだけが
この胸にしみとおる

荒れ果てた荒野の道を
あなたは一人で歩いて行く

とどめてもとどめても
あなたは遠ざかる
抱きしめても抱きしめても
風はまだ吹きやまぬ
『愛する人へ 』 加藤登紀子自選詩集 著・加藤登紀子 発行所・株式会社 サンリオ ヨ リ