〜 〜 『 寅 の 読 書 室 』 〜 〜
 
2007/12/19 (水) 雨 の シ ャ ン ソ ン
しずかに肩をすぼめて 雨が降ります
だまって歩く人の背中に振ります
こんな夜に ひとりで歩く街は思い出通り
雨ににじんだ街の灯が あの日のことを知っている

ふりしきる雨の中で 二人抱き合った
どこにも行くあてのない 迷子のように
たしかなことは何もなくて
ぼんやり白いあしたが見えた

うれしさも苦しさもいつか 通りすぎて
そこにはただしずかに 雨が降るだけ
悲し過ぎること ゆるせないこと
ふるえる夜はあるけれど
あの日雨にぬれながら抱いた
あなたのぬくもり忘れない

窓辺に降る雨を この手にうけとめて
あの日のあなたのように 抱いてあげるわ
今夜も街に雨が降ります
恋した誰かに逢いに来るように

今夜も街に雨が降ります
恋した誰かに逢いに来るように
『愛する人へ 』 加藤登紀子自選詩集 著・加藤登紀子 発行所・株式会社 サンリオ ヨ リ