〜 〜 『 寅 の 読 書 室 』 〜 〜
 
2007/12/19 (水) 川 の サ ン バ
流れる川のように
いつもの出逢いが
私の胸の中を
通りすぎていったわ
誰よりもあなたを愛したとは
言えないけれど
突然に出てゆくなんて
あまりにもさびしすぎる

人はみんな旅人
帰るところはないわ
さよならなんていつでも
言えるはずだけれど
さびしさは真冬の風のように
体を吹きぬける
抱きあうぬくもりだけが
なによりも信じられる

どこへ行こうというの
何もかもふりすてて
地図にない川のように
あてどのない旅をして
誰よりもあなたを愛したとは
言えないけれど
あなたの後ろ姿が
私は一番好きだった
『愛する人へ 』 加藤登紀子自選詩集 著・加藤登紀子 発行所・株式会社 サンリオ ヨ リ