〜 〜 『 寅 の 読 書 室 』 〜 〜
 
2007/12/18 (火) 愛 す る 人 へ ── 砂丘にて ──
砂浜をかけていく 少年の足跡
たわむれる波の音 光る風
遠いあの日から 走った月日が
二人の間を流れる

あなたの心が 見つからなくて
どうしても 愛せない 夜もあったけど
いつも あなたを 捜してしまうの

あの頃は 何もかも これからのためだった
失うものもなく 若すぎて
二人の争いに 勝ち負けはなかった
自分の弱さに 負けただけ

いくつもの扉を あけてみる度に
知らない あなたに めぐり逢えたのよ
不思議な やさしさ あなたに感じて

淋しさにとどかない 言葉を重ねて
孤独をつかめない 愛をかわす
指からさらさらと こぼれ落ちる歳月
浮んでは消えていく 思い出

人はみな愛だけで 生きてはいけない
うちよせる 波間に 寄り添う心で
はるかな いとしさ 感じていたいの
『愛する人へ 』 加藤登紀子自選詩集 著・加藤登紀子 発行所・株式会社 サンリオ ヨ リ