(一) 烏
髪
蝉
鬢
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頭髪はウルシのように黒く (日本で言う “カラスの濡れ羽色”
) 、雲のように多く、立てば地に届くほど長く、光沢があって、よい香りがすること。蝉鬢とは蝉の羽のように薄い鬢である。
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(二) 雲
髻
霧
鬟
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髻も鬟も、ともに髷 (マゲ) 、髻 (モトドリ)
のこと。雲や霧のように高いまげを言う。
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(三) 蛾
眉
青
黛
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周 (シュウ) のころから眉を剃り落し、黛 (マユズミ)
で自由に描く風習が生まれた。これが青黛である。また眉の理想的な形は蛾のように長くて彎曲していることである。「蛾眉」
の語は早くも 『詩経』 や 『楚辞 (ソジ) 』
に見えている。
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(四) 明
眸
流
眄
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「目は口ほどに物を言い」 とか 「糸屋の娘は目で殺す」 とか日本でも言うように、美しい目が美人の要素であることは、中国でも同じで
「美女の貌 (カオ) は眉目の間にあり」 という通りである。流眄は
“流し目” と訓じる。
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(五) 朱
唇
皓
歯
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赤い唇と、真白い歯のこと。俗に 「目鼻口がととのっているのが美人」 とされている。
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(六) 玉
指
素
腕
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中国人は指先を大切にする国民で、かっては爪を長くして磨き上げたものである。指は尖・細・長・嫩
(ヤワラカイ) を良とした。腕は、なめらかで肉付よく、白
(素) くなけらばいけない。
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(七) 細
腰
雪
膚
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日本でも柳腰というが、中国人も、なよなよとした細い腰の方を、一般的には好んだ。雪膚すなわち雪のような真っ白の肌については説明の必要はあるまい。
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(八) 蓮
歩
小
韈
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蓮歩は纏足 (テンソク) した小さな足で、小韈は、それの合わせた小さな靴下である。中国の男性は、女性の大足を嫌った
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(九) 紅
粧
粉
飾
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白粉をつけ、紅を施すことで、その起源は古い。白粉は殷末周初
(前十一世紀) から、紅は少し遅れて春秋ごろ (前八、七世紀)
から始まったようである。頬に紅で丸を描くのは、唐代、宮女がメンスの場合に 「御寝には侍せません」
という印としたのに始まるとか。
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(十) 星
靨
鴉
黄
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星のようなエクボと、鴉黄という化粧粉を眉間から額にかけて黄色に塗ること。エクボは三国時代
(三世紀) 呉のある夫人が誤まって頬を傷つけ、傷は治ったものの、その痕が却って愛嬌を増したので、宮女が真似をしたのに始まるという。また鴉黄は漢のころに始まったもので、五代
(十世紀) には眉を抜き、その跡へ鴉黄で描く横眉黒粧法が流行したという。
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(十一) 肌
香
佩
薫
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肌に香気があって薫りを帯びていること。 「女の香」 である。脂粉のそれではなくて自然に皮膚から発生する香気である。
春秋のころ、越王勾践 (コウセン) が呉王夫差
(フサ) に献上した西施
(セイシ) という美人の肌は薫っていたという。香水の代用品になったのである。
そのほか、漢の飛燕 (ヒエン) ・合徳 (ゴウトク)
、唐の瑤英 (ヨウエイ) 、清の香妃 なども肌の芳香で有名である。
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現代視点・中国の群像 楊貴妃・安禄山 旺文社発行 ヨリ
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