布引の滝は、須磨とともに神戸二大名勝の一つである。 滝としては日光の華厳の滝、紀州那智の滝とともに三大神滝と呼ばれ、古くから神秘的な伝説が作られ、物語や詩歌に多く引用されてきている。 滝は、現在の新幹線神戸駅の北、約百メートルの位置に雌
滝があり、その上二百メートルの所に雄
滝があって、その両滝に挟まれて、上から夫婦
滝、鼓
ケ滝がある。この四つの滝の総称が
「布引の滝」 である。 滝の水源は、生田川の上流、摩耶山の奥で六甲山系の獺
池から」出ている。途中、摩耶山再度山の渓流の水が集まり、トエンティクロスの景勝となっている。 雄滝は、巌頭から滝壺までの高さが約四十三メートル、水は六段に折れながら下の滝壺に落ちている。 雄滝を経た水は、しぐ前面の約六メートルの夫婦滝にそそがれる。ちょうど狭衣
橋からみると二筋の凹型のみぞをつくり、この二つ並んで落ちる滝の情景が、愛し合う夫婦愛の象徴として名前がつけられたとか言われる。 夫婦滝を経た水は約百七十メートルほど下ったところで鼓ケ滝となって落ちている。鼓ケ滝は散策路からは見えないが、樹木の繁っている中から音が聞こえて来て、その滝音がちょうどつづみを打つかのように聞こえるのでその名前がつけられた。 次に水は雌滝にそそぐ、雌滝の高さは約十九メートルで、雄滝ほど壮大には見えないが、それでも多くの水量が幅広く落花しているので見事なものである。雌滝の前面には観瀑橋があって、そこで滝水を見ていると、心が清められる感じがしてくる。 よく観光客が来て布引の滝を見たと言うが、この雌滝だけを見て布引の滝を見たということになるらしい。おしいものである。 市街地のすぐ近くにありながら世俗を離れた仙人の住む渓谷のような思いを抱かしてくれるこの布引の滝、実は昔はもっと滝水が豊富であって、落花する滝水は白玉のように飛び散り、その威容は実に壮大であったらしい。周囲の樹木、うっそうとする繁みとうまく調和して、布引の滝は、神々しい感じが漂い、精神修養の道場にもなっていて、いわゆる滝水に打たれる人が多かったようであろ。
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