二日目の会議では真正面から激突した。 『労働組合法制定』 と 『工場法改正』 が議案として提出されると、すかさず関東の代議員の一人が
「動議!」 といって挙手した。 「我々労働者は、ブルジョワ議会は承認していない。法律制定の提案は必要なし。 ── 我々は、断固として、かく叫ぶ。暴力は時に必要である。労働者の解放は、ただ、直接行動あるのみ!」 関東勢からは、割れるような拍手が起きた。関西勢は沈黙した。 賀川豊彦が登場した。 「ただいまのご意見は、労働組合の本質を取り違えています。剣によって起つ者は、必ず剣によって亡びます。労働運動は、一時的な権力闘争ではありません。
── いま、わたしたちが、資本主義と戦うに当たって、組織を持たないで、初めから暴力でいこうとするなら、その目的を達し得ないのみならず、何ものをも得るところはないと思います」 「議会主義」
を主張し、 「無抵抗の抵抗」 を説いた賀川は、 「日本のガンジー」 の名にふさわしかった。 関東勢はますますいきりたった。 「賀川の無抵抗主義、ひっこめ!」 「ヤソ坊主、でていけ!」 「貧民窟の王様は、労働組合内は必要ない!」 賀川も応戦した。 「君たちの言い分は、自分の手で自分の首を絞めるようなものだ!」 「世迷い言をいうな。貧民窟へ帰って、便所掃除でもしろ!」 この時の状況を、
『精神運動と社会運動』 のなかで、賀川はこんなふうに書いている。 |