静さて、鎌倉殿はご参詣になる。そして、若宮の東の廻廊の中の間に、御簾を掛けてご着座になる。その北に並んで、二位殿の幕を張る。また南に並んで乳母の三条殿の幕を張る。その他大納言・中納言・帥の典侍・冷泉殿・鳥羽殿の御局といって、銘々思い思いに幕を張り巡らす。西の廻廊の中の間には、畠山が幕を張る。その北側には、うちゑくのや・小山・宇都宮らが幕を張る。また南側に並べて、和田小太郎・佐原十郎の幕を張る。
南の廻廊は一条・武田・小笠原・逸見・板垣が幕を張る。それに並んで、主君頼朝を守護申し上げる役の丹・横山。与・猪股・しん・村山らが幕を張る。特に御前の近くには、梶原父子の一門の幕を張り巡らした。早く来た者は、廻廊の石橋、ご拝殿の雨だれ受けの石や、広庭に肩を並べ、ござを敷いてひしめきあっていた。それより身分の低い者は、廻廊の外や橋の内側をきしませ、はっきりとは歌う声も聞こえないし、舞う姿も見えなかったが、上の山にかけてまっ白に埋めつくしていた。鎌倉の小路々々すべてが、静が舞うという事で、若宮に殺到し門前さながら市をなすほどであった。
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