御所では 「今か今か」 と待ち構えていたところ、景時が参上した。
二位殿の御方からも、 「どうであったか返事は」 とお使いがあった。
「ご命令だと申しましたが、返事すらなさいませぬ」 と申し上げると鎌倉殿も、
「以前から考えていた通りよ。彼らが都に立ち帰った時に、内裏や院の御所で、 『兵衛佐は、舞を舞えとは言わなんだか』
とお尋ねがあった際、 『梶原を使者として舞えといって参りましたが、何の面白さに舞ったり致しましょうか。遂に舞いませんでした』
と申し上げたとしたら、頼朝に威光がないかのようだ。どうしたらよかろうぞ。誰をやって言わせたらよいか」
とおっしゃったところ、梶原がこう申し上げた。
「工藤左衛門は、都におりました時にも、判官殿にいつもお目をかけられていた者でござる。その上、都育ちで口達者でござる、この者にお申しつけあそばされればよいかと存じます」
「それでは、祐経を呼べ」 と言って、お呼び出しになった。
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