『ロシア における 広 瀬 武 夫』 (抜 粋)

島田 謹二:著 ヨ リ

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    夜  思

四壁沈沈の夜

    誰か相思の情を破る

君を懐ひて心正に熱し

    嗚咽独り声を呑む

枕上孤燈の影

    憐れむ可し暗又明

潺湲たり前渓の水

    恰も吾が意を訴えて鳴る

恍乎として君忽ち在り

    秋波一転して清し

花顔恰も微笑して

    吾が熱誠を頷くに似たり

吾身と吾意と

    唯一すら君に向かひて傾く
                  武 夫
「矛にぎる 手に筆とりて 外国の
       みやびのみちを 大和言の葉」
「筆とりて うゑ移しみむ とつくにの
       父の園生に やまとことのは」
「筆とりて うつすこころを しるや君
       訳しもあえず 大和言の葉」
「ウラル山 嶺のこなたへ 敷島の
       大和言の葉 うつしみるわれ」
「ウラル山 嶺のこなたへ しきしまの
       大和ことばの 花やつたえむ」