続吟剣詩舞漢詩集

蒙（もう）古（こ）来（らい）
頼山陽

筑（ちく）海（かい）の颶（ぐ）気（き）天（てん）に連（つら）なって黒（くら）し

海（うみ）を蔽（お）うて来（きた）る者（もの）は何（なん）の賊（ぞく）ぞ

蒙（もう）古（こ）来（きた）る北（きた）より来（きた）る

東（とう）西（ざい）次（し）第（だい）に呑（どん）食（しょく）を期（き）す

趙（ちょう）家（か）の老（ろう）寡（か）婦（ふ）を嚇（おど）し得（え）て

此（これ）を持（じ）して来（きた）り擬（ぎ）す男（だん）児（じ）の国（くに）

相模（さがみ）の太（た）郎（ろう）膽（たん）甕（かめ）の如（ごと）し

防（ぼう）海（かい）の将（しょう）士（し）人（ひと）各（おのおの）力（つと）む

蒙（もう）古（こ）来（きた）るも我（われ）は怖（おそ）れず

吾（われ）は怖（おそ）る関（かん）東（とう）の令（れい）山（やま）の如（ごと）きを

直（ただ）ちに前（すす）み賊（ぞく）を研（き）って顧（かえり）みるを許（ゆる）さず

吾（わが）が檣（ほばしら）を倒（たお）し虜（りょ）艦（かん）に登（のぼ）り

虜（りょ）将（しょう）を擒（とりこ）にして吾（わ）が軍（ぐん）喊（かん）す

恨（うら）む可（べ）し東（とう）風（ふう）一（いつ）驅（く）大（だい）濤（とう）に附（ふ）し

羶（せん）血（けつ）をして尽（ことごと）く日（につ）本（ぽん）刀（とう）に膏（ちぬ）らしめざりしを