京城の秋遊、亡き先生を懐うこと有り
江
馬
細
香
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重
ねて京
城
に入
るも人
存
せず
白
楊
青
草
暗
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す
検
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る旬
半
秋
遊
せし袂
涕
涙
の痕
酒
の痕
よりも多
し |
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重入京城人不存
白楊青草暗銷魂
検来旬半秋遊袂
涕涙痕多於酒痕 |
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天保四年 (1833) 秋の作。四十七歳。
秋上京した細香は頼家を弔問し、京の諸友と共に亡き山陽を偲んだ。
また京都にやっては来たが、逢いたい人はもういない。先生のお墓の傍のはこ柳や、はびこった草を見るにつけ、ひそかに魂も消えてしまいそうな思いにくれている。
この五日ほど秋景色をみてまわった着物の袂を調べてみると、酒のしみよりも涙のしみの方が多く残っている。
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○京城==みやこ。京都。
○白楊青草==はこやなぎと青く茂った草。
○暗銷魂==暗はひそかに。銷魂は魂も消えてしまいそうなほどつらい。
○検来==検はしらべる。来は助字、〜するとの意。
○涕涙痕==涙のあと。
○酒痕==酒のあと。
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