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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/22 (火) 春 日 即 事

しゅん じつ そく
    さい  こう 

とう ふう せん せん としてれん

こころ みにばい わんとして

    みぎりくだ ることおそ

いち ゆう こう しゃ じつうち

われさき んじてすでとう ほう
東風剪剪入簾帷

試訪梅花下砌遅

一朶幽香斜日裏

先儂已有凍蜂知
文化十五年 (1818) の作。三十二歳。

まだ少し冷たい春風が窓かけの中に吹き込んでくる。ためしに梅の花の様子をうかがいに庭の石だたみに下りてみたけれども、どうやら一足遅かったらしい。
夕陽のもとに花開いた一枚のおくゆかしい香りに、寒さに凍えていた蜂が私よりも先に気づいていた。

○即事==目前のことを述べるという意の詩題。
○剪剪==風のうすら寒いさま。
○砌==軒の下の石畳。
○一朶==ひと枝の花。
○幽香==梅の花のおくゆかしい香り。
○凍蜂==冬生き残っていた蜂。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ